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​保全生物学研究分野の研究について

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当研究室では、野生動物を対象に生態学、遺伝学、生理学といった様々なアプローチで基礎的・応用的研究をしており、かつこれらの分野横断的な研究を目指しています。現在のところ、以下三つのテーマを主軸に研究を展開しています。

①ツキノワグマの適正な保護管理に向けた研究

②生き物のストレスに着目した生理生態学・保全生理学的研究

③親子関係に着目した進化生態学・行動生態学

oツキノワグマの適正な保護管理に向けた研究

アンカー 1

近年の森林環境や社会構造の変化は、野生動物の分布域や行動パターンに影響を与え、人との軋轢も増加しています。本研究室が研究対象としているツキノワグマについては、農作物被害や人身被害の軽減が望まれていますが、個体数密度や繁殖力が低く、捕獲圧に対して脆弱な一面を持っています。すなわち、本種の保護管理には、個体群の絶滅と被害の発生という二つの相反するリスクを最小化する「リスク管理」が求められます。長野県軽井沢町周辺では、20年以上にわたってNPO法人ピッキオがツキノワグマの調査を行っており、個体の成長、分散、冬眠などに関する情報が蓄積されてきました。当研究室ではピッキオと共同研究を進め、野外調査を行うとともに、遺伝学や統計学の手法を駆使してデータの解析にあたっています。これら多くの個体数かつ長期的研究の成果は、動物の社会性の進化を理解することに大きく貢献するだけでなく、応用として効果的な保護管理方法の確立にも寄与することが期待されています。

o生き物のストレスに着目した生理生態学・保全生理学的研究

アンカー 2

ストレスという概念が生まれてからおよそ70年がたち、ストレスはいまや日常生活でもよく耳にするほど一般的な言葉になりました。ストレスと聞くとネガティブな印象を持たれることが多いですが、実は生き物が野外で生きていくためには必要な生理機構なのです。副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドを主軸とするストレス反応は、エネルギー産生や代謝、免疫などに影響し、生き物の身体をストレスイベントに対処できるようにしてくれます。しかし、何かしらの影響でストレス反応が長期的に働き、グルココルチコイドの影響を長期間受けてしまうことを慢性ストレスと言い、これは生き物の健康を害することが分かっています。そのため、自然下で生息している生き物を対象にストレスを定量化することで、生理学的な適応メカニズムとしてストレスがどのように役に立っているのかだけではなく、生息環境下での健康状態を評価するなど、世界中で幅広い分類群を対象に多様な目的でストレスの測定が行われています。

私たちの研究室ではストレスに着目し、変化する自然環境でストレスが生物の生活にどのように関係しているのかを明らかにしようとしています(生理生態学)。また、ストレスを保全や管理に活かすためにどのような要因がストレスを引き起こすのかも明らかにしたいと考えています(保全生理学)。主な対象動物はリス科哺乳類ですが、必要に応じて様々な分類群を扱っています。また、研究結果を都市計画や都市環境の保全、外来種対策などに繋げていくのも目標に掲げています。ストレス以外にも、生理学的機構が関係するテーマにも取り組んでいます。

アンカー 3

o親子関係に着目した進化生態学・行動生態学

個体の発生から成熟に至るまで様々な過程において、子は親から影響を受けています。魚類であるサクラマスは、2000粒以上の卵を持っており、人工授精の方法が確立していることから、多数の半兄弟の集団を人為的に作成することが容易にできます。すなわち、遺伝学的なアプローチによって親による子への影響を評価するのに好適な材料であるといえます。本研究室では、これまで父親の影響に着目した様々な人工交配を行い、子の成長、分散、性成熟および生活史多型などに対する親の遺伝的な影響など、進化生態学に関わる面白い生命現象の解明に挑んでいます。

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