論文がアクセプトされました!
- 保全生物学研究分野
- 2021年12月9日
- 読了時間: 3分
こんにちは。
久々の登場です!嶌本です。
ひっそりと講師に昇進をしました。
ますます頑張らねばならないのですが、タイトルにある通り筆頭著者の論文がアクセプトされました~!

タイトルは「クリハラリスにおける長期ストレスの指標とした体毛コルチゾール解析の有効性および有用性」というものです。
General and Comparative Endocrinologyという比較内分泌学では権威である雑誌に論文が掲載されたことをうれしく思っています。
大切なことは論文を生産する持続力ですが、まずは生産能力の向上もしないと持続させることもできないので、ここは素直に喜びます!やったー!
以下に、ストレスや体毛のホルモンについて簡単に(本当に簡単に!!)解説したいと思います。
興味ある方は一読してください。
ストレスに関する生態学における考え方は非常に複雑ですので簡略的に書いております。
その点ご了承くださいませ。
これまで体毛には様々な生物学的な情報が含まれていることがわかってきています。
ストレスホルモンとして知られている副腎から分泌されるコルチゾール(グルココルチコイドの一種)もその例外ではなく、従来の方法とは異なり体毛のコルチゾールは長期間のストレスを反映していると考えられています。
この”長期ストレス”というのがミソなのです!
ストレスという言葉が一般社会に広く浸透してしまっているため、ネガティブな印象を抱く人も多いと思います。
しかし、ストレスは短期的な場合では、むしろ動物にとっては適応的な反応だとされています。
よく適度なストレスは体に良いって聞きますよね?イメージはそんな感じです。
そもそも、ストレス反応というのはストレス因子(ストレッサー)に対処するための生理メカニズムなのです。
しかし、何かしらの原因により、ストレッサーが持続的に存在し、ストレスが長期化すると「慢性ストレス」へと移行してしまいます。
慢性ストレスはコルチゾールの長期間の増加により引き起こされ、動物にとっては病的な状態です。
主な影響としては、免疫機能の低下や繁殖抑制、はたまた生存率が下がるといったことが知られています。
そのため、その個体(もしくは個体群)が健康なのか?ということをコルチゾールを定量化することで評価する試みが世界中で行われています。
しかし、これまでの手法は血液や糞を用いた評価方法であり、短期的なものでした。
これに対して体毛のホルモン解析は長期間の情報が含まれるという利点が存在することから2010年代に入ってから生態学分野においても急激に論文が増加しています。
長くなりましたが、本論文においても、外来種として知られるクリハラリスにおいて①体毛コルチゾール解析が長期的なストレスを反映している、②体毛コルチゾール濃度が成獣では栄養状態と負の関係があることを明らかにしました(以上は主なポイントを抜粋しています)。
僕としては②の栄養状態と関係があったことに強い興味を抱いています。
栄養状態は繁殖や生存率にも強く関係し、ひいては適応度にも関係しうるものです。
そのため、体毛のホルモンと個体の適応度にも関係があれば、非致死的な手法で希少種の健康状態を推定することも可能であり、保全にはとても心強い手法になるのでは?と秘かに期待をしています。
しかし、今回の対象種は外来種。
上述したような保全を対象とする動物ではありません。
それではどうするのか?クリハラリスはただのモデル動物なのか?
そういった動物に対しても、一応考えはあります。
ストレスを指標とした予測マップを作成し、駆除や対策を優先すべきエリアを抽出することも可能になるかもしれません。
しかし、これらについてはまだまだ実装には程遠いです。精進します・・・。
生理学的なアプローチの可能性を広げていけるようにこれからも研究に従事したいと思います。
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