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都市に住むエゾリスのストレスに関する研究

  • 執筆者の写真: 保全生物学研究分野
    保全生物学研究分野
  • 2020年3月2日
  • 読了時間: 3分

更新日:2020年8月5日

こんにちは、嶌本です。

ブログをサボっていました・・・スミマセン。

最近はコロナウイルスが社会的な問題となっていますが、皆様お体ご自愛下さいませ。

さて、今回は研究室のブログらしく最近出版した論文の解説をしたいと思います。


僕は北海道で博士号を取得後、2年間研究員をしていました。

その時に取り組んでいた研究課題が「都市のエゾリスはストレスを感じているのか?」というものです。

当時、北大の学生であったU君が都市生態学の研究をバリバリ進めていて、都市に生息するエゾリスの行動について研究をしていました。

僕も彼と共同研究をすることになり、ホルモン解析を活かした研究をしようと思い、都市ストレスにいきつきました。


都市環境は郊外とは異なり、人の生活圏の中に生息地があるため、人の影響を非常に受けやすい環境です。

これまで多くの研究で、人為的な活動(例えばエコツアーとか)は野生動物にストレスを与えることが示されてきたため、都市環境も同様に野生動物にとってはストレスな環境だろうと考えられていました。

しかし一方では、都市は餌付けがあったり、人がいるために捕食者が少なかったり、一部の動物においては魅力的な要素もあります。

これらのことを踏まえると、結局のところ都市って本当にストレスな環境なの?という疑問がわいてきます。

そこで、この疑問について取り組んだ研究がこちらです。



論文が掲載された雑誌は日本生態学会が出版している国際誌であるEcological Researchです。


僕らはストレスを定量化するために、野生の哺乳類では一般的な手法になっている「糞中コルチゾール分析」を採用し、エゾリスを対象にストレスレベルの定量化を実施しました(図1)。

図1.糞中ステロイドホルモン測定について



都市のエゾリスの糞から得られるストレスレベルを人為的な影響を受けにくいと考えられる郊外のリスのものと比較してみたところ、都市と郊外のエゾリスのストレスレベルは差がないことがわかりました(図2)。

図2.都市と郊外のリスのストレスレベル(Shimamoto et al. 2020のFig. 1を一部改変)



また、ストレスを慢性的に受けてしまうと体重の減少もよく見られますが、そういった所見も見られませんでした。


つまり、これらの結果から、都市で見られるエゾリスはストレスを受けずに人の近くで生息しているということになります。

理由はいくつか考えられ、一つは都市ならではの環境要因(餌付けがある、捕食者が少ない)によるもの、もう一つは都市環境に対して生理学的に順化している可能性です。

これらの可能性に白黒つけるのは難しいですが、都市に住む生物が都市環境にうまく順応していることを示すことができました!


まだまだ課題が残されているため、本研究室でも引き続き都市とストレスの関係について研究をしています。

これらの研究が人と動物のより良い共存の実現につながっていけるようにしていきたいですね。


いくつか都市に住むエゾリスの写真を載せます!!可愛さを堪能してください(^^)




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